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抵当権の被担保債権の元本弁済による登記手続

(ア) 抵当権の被担保債権の元本弁済

抵当権は,設定者に対する関係においては、元本の他に利息その他の定期金をも担保し,設定者以外の者に対する関係においては,最後の2年分の利息,損害金を担保している(民法375条1項本文,2項)。したがって,元本が全部弁済されても利息が残存する以上,抵当権は消滅せず,設定者からの抹消請求は認められない。抵当権を抹消すれば,抵当権者は2年分の利息,損害金の優先弁済権を主張できなくなるからである。しかし、元本の一部弁済がされた場合,債権額の減額の登記が認められるので,元本債権の全部が弁済された場合に,元本債権の消滅を公示する登記が認められるべきである。

(イ) 登記申請手続
 抵当権の被担保債権の元本弁済がされた場合の登記手続としては,抵当権によって担保されている元本と最後の2年分の利息,損害金の合計額から,弁済された元本を控除した額を債権額とする意味で,最小限度,残存する 利息,損害金のうち最後の2年分の利息,損害金に債権額を変更する抵当権変更登記をすることができる。そして,この登記申請書には,後順位抵当権者等の承諾等を証する情報は提供不要である。これらの者は,最後の2年分の利息,損害金は,抵当権によって担保されることを承知しているからである。
 残存する利息,損害金が2年分以上存在する場合,残存する利息又は遅延損害金の全部が,当該抵当権により担保されており,ただ最後の2年分を超えるものについては,第三者に対抗できないとされるにすぎないから,後順位抵当権者等の登記上利害関係を有する第三者の承諾等を証する情報を提供すれば,債権額を残存する利息又は遅延損害金の全部に変更する付記登記をすることができる。利害関係人の承諾等を証する情報を提供することができないときは,最後の2年分については付記登記で債権額の変更の登記を,2年分を超える分については主登記による利息の特別の登記をすることになる。
 上記をまとめると,次のとおりである。

残存する利息,損害金

承諾等を証する情報の提供

登 記

申請書

2年分内の利息,損害金

不要

付記

1通

2年分を超える利息,損害金

付記

1通

 

2年分につき付記

 

2年分を超える部分につき
主登記による利息の特別の登記

2通

(ウ) 申請人
  元本弁済による抵当権変更登記は,抵当権者と設定者(所有権の登記名義人等)の共同申請であるが(不登60条)、債権額が減少する場合には,抵当権設定者が登記権利者、抵当権者が登記義務者となり,債権額が増加する場合には,その逆となる。

(エ) 利害関係人

  元本弁済による抵当権の変更登記は,抵当権の債権額の変更登記であり,登記上利害関係を有する第三者の承諾等を証する情報を提供すれば付記登記で,提供することができなければ主登記でなされる(不登66条,不登規則3条2号)。この場合の利害関係人は,2つ考えられる。
 1つは,元本弁済後抵当権によって担保される未払利息,損害金が2年分を超えるかどうかで後順位抵当権者,後順位所有権仮登記権利者,後順位差押え,仮差押え,仮処分債権者が利害関係人となるか否かの問題であり,もう1つは,元本弁済は抵当権の債権額の変更登記であるから,債権額の増減に伴う利害関係人が考えられる。

 @ 元本弁済後に抵当権によって担保される利息,損害金が,最後の2年分を超えない場合には,後順位抵当権者,後順位所有権仮登記権利者,後順位差押え,仮差押え,仮処分債権者は利害関係人ではない。これらの者は,最後の2年分の利息,損害金は,抵当権によって担保されることを承知しているからである。
 最後の2年分以上の利息,損害金が存在する場合,後順位抵当権者等は不利益を受けることになるので利害関係人となる。

 A 抵当権の被担保債権の元本弁済による抵当権の債権額の減少の登記については,当該抵当権の転抵当権者等抵当権の処分を受けている者は,債権額の減少により不利益を受けるので,利害関係人となる。
 なお,利害関係人の承諾は不動産登記法66条の承諾であるから,その承諾の日付が原因日付に影響を与えることはない。


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