抵当証券
抵当証券は、抵当権と被担保債権とを合体して証券化することにより、抵当権付債権の譲渡のための繁雑な手続を経ることなく、抵当権の裏書譲渡により抵当権と被担保債権とを移転することができるものである。抵当証券が発行された後は、抵当権及び債権の処分は抵当証券をもってすることを要し、抵当権と債権とを分離して処分することはできない(抵証14)。
土地、建物または地上権を目的とする抵当権を有する者は、抵当証券発行の特約がある場合には、その抵当権の登記を管轄する登記所に抵当証券の交付を申請することができる(抵証1T)。ただし、抵当証券法2条に掲げられた事項に該当するときは、抵当証券の交付を申請することができない。
抵当証券の交付を申請するときは、申請書に抵当権者の権利に関する登記済証(抵証3T)、手形その他の債権に関する証書があるときはその証書があるときはその証書(同TB、U)、抵当証券発行の特約の登記がないときには抵当権設定者または第三取得者および債務者の同意書(同TC)等を添付することを要する。また、担保価値の不十分な物件について抵当証券が発行されることを防止するために、申請書には担保の十分性を証する書面を添付することを要する(抵証細21ノ2)。
★ 抵当証券交付の付記登記は、抵当証券を交付したときに登記官が職権で抵当権設定登記になす登記であり(不登129)、抵当証券の発行の有無を登記簿上明らかにするためになされるものである。また、この抵当証券交付の付記登記のみを抹消する登記は、抵当権は依然として存続するが、その証券化が解かれた場合になされるものである。この証券化が解かれた場合とは、抵当証券の喪失により除権判決があった場合と、抵当証券の所持人が証券化を取り消した場合とがある。そして、抵当証券交付の付記登記の抹消を申請するときは、申請書に抵当証券または除権判決の謄本を添付しなければならない(不登細44ノ18)。除権判決の謄本を添付して抵当権交付の付記登記の抹消を申請するときは、抵当証券は既に喪失しているのであるから、この場合の申請書には抵当証券を添付することを要しない。
★ 抵当証券の交付を申請するときは、申請書に担保の十分性を証する書面を添付することを要する(抵証細44ノ18)。このことは、抵当証券が発行されている共同抵当について、担保の目的たる不動産の一部につき抹消登記を申請する場合も同様である。そのため、共同抵当の目的たる不動産の一部について、抵当権の抹消登記を申請するときは、他の共同担保物権で債権の全部を担保するに足りることを証するため、申請書には担保の十分性を証する書面を添付することを要する(先例平元.10.16−4200)。
★ AからBへの売買による所有権移転登記およびAのための買戻特約の登記がなされた後、抵当権の設定登記がなされている場合に、当該抵当権につき抵当証券の交付の申請をすることはできない(先例平元.11.15−4777)。買戻特約の登記がなされた後に設定された抵当権は、買戻権が行使された場合、買戻権者に対抗することができないから、その内容が不確定・不安定であると解されるので、抵当証券法2条4号と同様の趣旨により、抵当証券の発行には適さないと解されるからである。これは、買戻特約につき登記された買戻期間が既に経過している場合であっても同様であるとされている(登記研究569P95)。買戻期間内に買戻権の行使はなされている可能性もあるので、登記簿上は買戻期間が満了していても、買戻権の行使による登記がなされる可能性がなくなったものではなく、買戻特約の登記が登記簿上存する以上、登記官はこれを無視して抵当証券交付の手続を進めることはできないからである。
★ 抵当証券が発行されている抵当権であっても、先順位の抵当権から順位の譲渡を受け、その登記を申請することができる(先例平7.11.7―4167)。そして、当該順位譲渡の登記を申請するときは、申請書に抵当証券を添付することを要する(同先例)。有価証券である抵当証券は、証券の記載自体からその権利の内容が明らかになっている必要があり、証券に抵当権の順位番号が記載されて(抵証12TA)これが流通におかれている以上、当該抵当権が順位の譲渡を受けたときは、これを抵当証券に記載する必要があると解されるからである。
★ 抵当証券が発行されている抵当権につき、弁済期到来後の日付をもって裏書譲渡した抵当証券を申請書に添付して、債権譲渡を登記原因とする移転登記を申請することはできない(先例平11.4.28―911)。抵当証券法40条においては、満期後の裏書を認める手形法20条1項を準用しておらず、また、抵当証券は弁済期到来後に履行を受けるということよりも、弁済期前にこれを裏書して流通させることを主たる目的としているので、弁済期到来後の裏書による譲渡は認められないと解されているからである。