Case @XがYから無償で借りている家の外壁に欠陥があり雨漏りが生じた。XはYに対して修繕を要求できるか。雨漏りによりXの家具が傷んだ場合はYに何らかの請求ができるか。 A使用借人Xは貸主Yから目的物の所有権を取得したZの立退請求を拒めるか。 B契約に期間も目的も定めていない場合、貸主は、どういう状況になれば契約関係を終了させて返還を請求できるか。 |
民法605条(不動産賃借権の対抗要件)
不動産ノ賃借権ハ之ヲ登記シタルトキハ爾後
其不動産ニ付キ物権ヲ取得シタル者ニ対シテモ其効力ヲ生ス
<参照>民177、民395・566U・581U
趣旨
不動産賃借権に対抗力を付与しうるものとし、賃借人の保護を図った。しかし、賃貸人は登記に非協力的であるうえ、賃借人には登記請求権が認められていないため、
十分に機能せず、特別法により保護が図られている。
注釈
1. 対抗力を具備するための要件として、不動産賃借権の登記が必要である。
借地借家法では、借地人の所有する建物についての登記があれば、借地権は排他性を生じる(同法10条1項)として、賃貸人の協力なしに賃借権に排他性を備えることができるとした。また借家関係では、建物につき引渡があれば対抗力があるとした(同法31条1項)。
2.
借地借家法10条1項(旧建物保護法1条)に関する判例
(1) 登記の建物所在番地表示が実際と多少相違していても、
その登記の表示全体から建物の同一性を認識できるような場合であればよい。
(2) 建物の登記は表示の登記でも可。
(3)
同居の長男名義の登記では対抗力は認められない(最判昭41.4.27)。
3.登記した賃借権の効力
(1) 所有権に対する効力
不動産の所有者に変更があっても、新所有者に賃借権の効力を主張しうる。
その結果、新所有者は賃貸人の地位を承継し、旧賃貸人はその関係から離脱する。
(2) 用益権に対する効力
用益権が債権の場合、その効力が否認される。
物権の場合、賃貸借関係はこの用益権者との間に移行される。これが不可能な場合は用益権の効力は否定される(通説)。
(3) 担保物権に対する効力
担保権(とくに抵当権)が実行されても、賃借権は消滅せず、
賃貸借関係は競落人との間に移行する。
(4) 妨害排除請求
対抗要件を具備した賃借権に妨害排除請求が認められる(最判昭28.12.18)。
「敷金返還」と「解約・更新拒絶」について 敷金の意味 敷金とは、借主が賃料不払いなど貸主に損害を与えた場合に、賃貸借終了時にその損害額を差し引いて返還することを予定して、賃貸借の契約時に借主から貸主に預けられた金銭のことをいいます(大審判大15.7.12)。 敷金によって担保される範囲 敷金によって担保される貸主の債権範囲は、賃貸借契約の存続中の未払賃料や室内の損壊などによる損害賠償請求権だけでなく、賃貸借契約の終了後建物を明け渡す時までに生ずる賃料や、建物の毀損などによる損害賠償請求権を含みます(最判昭48.2.2)。 貸主が代わった場合の敷金返還請求 賃貸借契約の途中で貸主が代わって、それまでの貸主が新貸主に対して敷金を支払っていない場合でも、賃貸借契約が終了したときは新貸主は敷金を返還しなければなりません(最判昭44.7.17)。 敷金の返還はいつ求めることができるか 賃貸借契約が終了しても、直ちに敷金を返還する必要はありません。 敷金は、建物の明け渡しまでに貸主に生じた一切の損害を担保するものですから、敷金は建物の明け渡しを受けてはじめて返還義務が生じます。また、返還額も、建物の明け渡しまでに生じた修繕費用などの損害額を差し引いた残額についてのみ返還義務が生じます(最判昭48.2.2)。 敷金の返還と建物の明渡しはどちらが先か 貸主は、借主が建物を明け渡したときにはじめて敷金返還義務が生じ、あくまで借主の建物の明け渡しの方が先になされなければなりませんから、借主は敷金が返還されないからといって建物の明け渡しを拒むことはできません(最判昭49.9.2)。 返還時に差し引く金額を予め定めることができるか 契約時に敷金から差し引く金額を一定額または一定割合と定めることも、判例上一般に認められています。 特に、関西では「敷き引き」と呼ばれ、広く行われています。 敷金返還に関する特約 天災などの不可効力により建物を使用することができなくなった場合には敷金を返還しない、という特約を結んだとしても、判例上その特約は無効とされています。したがって、地震によって建物が損壊し使用することができなくなり賃貸借契約が終了した場合には、敷金を返還しなければなりません(大阪地判平7.2.27)。 借主からの解約申入れの場合 賃貸借契約に期間の定めのない場合には、いつでも借主から解約の申入れができますが(民法617)、期間の定めのある賃貸借においても、解約権を留保する旨の特約がなされていれば、期間の途中であっても借主から解約申入れができます(民法618)。 ただし、借主が解約申入れをしても、即時返還特約がない限り、賃貸借契約が終了するためには解約申入れ期間を経過することが必要です。なお、借主の解約申入れ期間は特約によって定まりますが、特約がない場合は3ヶ月となります(民法618、617)。 ところで、借主が解約申入れ期間経過前に明け渡した場合であっても、それはあくまでも権利の放棄に過ぎませんから、解約申入れ期間経過までの賃料支払い義務が当然に免除されるものではありません(東京高判昭59.10.16)。このため、この場合借主はなお解約申入れ期間満了までの賃料等を支払わなければなりません。 また、借主の都合による期間中途解約の場合、次の借主が入居するまで賃料を支払う旨の約定も公序良俗に反せず有効であるとしている判例もあります(東京地判昭45.2.10)。 貸主からの解約申入れ・更新拒絶 1.貸主は、期間の定めのない賃貸借契約については6ヶ月前に解約申入れをすることができ、期間の定めがある場合は期間満了前の1年ないし6ヶ月前に更新拒絶の通知をし、かつ、期間満了後に借主が建物の使用を継続している場合には、遅滞なく異議を述べなければなりません。その上、貸主が解約申入れ・更新拒絶の通知をするには、正当事由が備わっていることが必要となります(借地借家法26@、27A、28)。 2.正当事由には、以下の事情が考慮されます(同28)。
|